DENTORY JOURNAL
IPS e.max Ceram Artの講習会へ。前歯の“透明感”が少しわかった気がする
名古屋でIvoclarのハンズオンセミナーに参加し、前歯部の透明感と奥行き、Structureを使った歯肉部の色調・立体表現を実習しました。
名古屋で開催されたIvoclarのハンズオンセミナー「IPS e.max ジルキャド プライム&IPS e.max セラムアート ストラクチャー・ステインテクニックの実践 ~ステインスキル “One Step Up” コース~」に参加してきました。
IPS e.max Ceram Artは普段の製作でも使用していますが、今回は前歯部と歯肉部の色調表現を、実際に手を動かしながら改めて整理することが目的でした。普段使っている材料でも、講師の作業を間近で見て、自分でも同じ工程を試してみると、色の置き方や見え方について新しい発見があります。
IPS e.max ZirCAD PrimeとCeram Artを使った実習
今回の実習では、IPS e.max ZirCAD Primeをベースに、IPS e.max Ceram Artを使った前歯部のステインテクニックに取り組みました。切端部の透明感や奥行き、歯冠内部に色が存在しているように見せる表現に加え、歯肉部では複数の色調とStructureを組み合わせ、明暗や厚み、表面の立体感を作っていきます。
材料名や色の種類を覚えること以上に、「何を、どこに、どの程度置くのか」を考えながら進める内容だったことが印象に残っています。
「透明感=青くする」ではなかった
今回一番の収穫は、前歯の透明感について自分の中で少し整理できたことでした。
以前は、透明感を出そうとすると「青やグレーを足す」という捉え方になりがちでした。ただ、それだけでは色が表面に浮いて見えたり、切端が不自然に暗く見えたりすることがあります。
今回の実習で改めて感じたのは、使う色だけでなく、どの位置に置くか、どこまでの範囲に入れるか、どの程度の明度と彩度にするか、周囲の色とどうつなげるか、というバランスのほうが大切だということです。
色そのものを目立たせるのではなく、歯の内部に色があるように見せる。切端部に薄い層が重なり、その奥に空間があるように感じさせる。その考え方が、実際に手を動かすことで少し見えてきました。
前歯の透明感の出し方が、少しわかった気がする。
IPS e.max Ceram Artは、単純に補綴物の表面へ色を塗るためのステインというより、内部に色が存在しているように見せたり、切端部の奥行きや透明感をコントロールしたりする使い方が面白い材料だと感じました。前歯部フルジルコニアのように、限られた厚みの中で色調と立体感を表現する場合にも、今回整理できた考え方を活かせそうです。
歯肉色の進化もかなり印象に残った
前歯の透明感と同じくらい印象に残ったのが、歯肉色の表現です。
Ivoclarの公式製品情報では、IPS e.max Ceram Art Illusion Gingivaに、焼成後の色調安定性を考慮したカドミウムフリーの赤色歯肉シェードが採用されています。カドミウムを使用せずに鮮やかな赤色の歯肉表現が可能になった点は、新しい材料設計として興味深く感じました。
実習では、歯肉部を単純なピンク一色に仕上げるのではなく、赤みや明暗、毛細血管のような表情、骨の存在感を意識しながら複数の色調を重ねました。さらにStructureを使って表面へわずかな起伏を加えることで、歯肉の厚みや立体感も変わって見えます。
歯の透明感の表現も面白かったが、歯肉色の進化もかなり印象に残った、というのが率直な感想です。
色調を整えてから、Structureで立体感を加える
この段階では、歯冠部の透明感と歯肉部の色調がある程度見える状態になっています。ここからStructureを使い、歯肉表面の細かな起伏や厚みを加えました。色調が同じでも、表面の形や光の反射が変わると、歯肉の見え方はかなり変わります。
途中工程の写真を並べると、完成写真だけでは分かりにくい、色と立体感を作っていく流れが見えやすいと思います。
講習会で完成した実習サンプル
掲載しているものは、講習会内の限られた時間で製作した学習用の実習サンプルです。通常の臨床製作のように、すべての工程へ十分な時間をかけて仕上げたものではないため、臨床で製作する補綴物とは工程や仕上げが異なります。
完成度を見せるというより、開始時から色調を重ね、Structureで立体感を加えていく変化を記録したものとしてご覧いただければと思います。
Dentoryの臨床技工へどう落とし込むか
今回学んだ技法を、そのまま形だけコピーするつもりはありません。使用するジルコニアや補綴物の厚み、支台歯の色、口腔内写真、周囲の天然歯など、実際の症例では条件が一つずつ異なります。講習会で整理できた考え方をDentoryの製作の中で試しながら、自分なりの表現へ落とし込んでいきたいと思っています。
特に前歯部フルジルコニアでは、切端部の透明感と奥行きの作り方に活かせそうです。インプラント補綴やAll-on-4では、歯冠色だけでなく歯肉色を含めた全体の調和が必要になるため、色の重ね方とStructureによる立体表現を検討していきたいと思います。
デジタル歯科技工では、CAD設計やCAM加工によって形態を高い再現性で製作できます。一方、最終的な色調や表面性状には、写真や症例情報を読み取りながら行う技工士の判断が残ります。今回の学びは、その仕上げの精度を高めるための一つの引き出しになりました。
派手な色を見せることではなく、口腔内へ入った時に自然に見える補綴物を目指して、これからも材料と技法の勉強を続けていきます。
Dentoryは浜松市の歯科技工所として、クラウン、インレー、ブリッジ、インプラント、All-on-4などのデジタル技工に対応しています。症例ごとの条件を確認しながら、設計から加工、仕上げまで取り組んでいます。