DENTORY JOURNAL
歯科技工所は10㎡以上? 厚労省の新資料をきっかけに、技工室とデータ管理を見直しました
厚労省の構造設備基準に関する資料を読み、技工室をメジャーで確認。CAD/CAM、3DプリンタのIPA管理、ホームページのデータ送信まで、Dentoryで見直したことをまとめました。
2026年10月2日に公開された、厚生労働省の「第9回 歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会」の資料を読みました。資料1のテーマは「歯科技工所の構造設備基準について」。普段は目の前の製作に集中しているので、設備や作業環境を少し離れた視点から見直す機会になりました。
※本記事は2026年10月6日時点で公開されている資料をもとにしています。今回の検討会資料には、すでに施行されている現行基準と、今後検討される内容の両方が含まれています。CAD/CAM、3Dプリンタ、電子データ管理等について、すべてが新しい基準として確定したわけではありません。
制度の解説をまとめようと思ったというより、読み進めるうちに「自分の技工所はどうだろう」と気になりました。最初に引っかかったのは、技工室の面積です。
「……うち、本当に10㎡ある?」
資料で「10平方メートル以上」という数字を目にして、急に少し不安になりました。普段使っている技工室を見回して、「……うち、本当に10㎡ある?」と気になり始めました。
Dentoryの技工室には、CAD/CAM機器や作業台、材料を置く場所があります。普段はその間を行き来しているので、実際の面積よりも狭く感じていたのかもしれません。「大丈夫だと思うけれど、ちゃんと確かめよう」と、メジャーを持ってきました。
少しドキドキしながら実際に測ってみたところ、10㎡以上あることを確認できました。ひと安心です。具体的な寸法はここには載せませんが、感覚で判断せずに測ってよかったと思いました。
ただ、面積を確認できたことと、構造設備基準全体への適合を確認できたことは別です。数字だけで安心して終わらず、機器の配置や作業のしやすさも含めて考えるきっかけになりました。
10㎡以上は、今回新しく決まった基準ではありません
資料1の7ページでは、歯科技工士法施行規則第13条の2の現行基準として、安全・防火に支障なく機器を配置できることと、面積が10㎡以上であることが示されています。従来からある基準で、今回の検討会で新たに決まったものではありません。
資料には現行制度の説明と今後の論点が続けて出てきます。私自身も、その区別を意識して読み直しました。「新しい資料が出た」ということと、「新しい基準が施行された」ということは、同じではありません。
CADだけの技工所と、加工まで行う技工所
資料の48〜50ページでは、CADで設計する業務、CAD/CAMで加工まで行う業務、3Dプリンタを使う業務など、仕事の実態に応じた設備の整理が論点になっています。CADとCAD/CAMで必要な設備が異なるのではないかという考え方も示されていますが、最終的な新基準として確定した内容ではありません。
Dentoryでも、画面上で設計する時間と、実際に材料を加工して仕上げる時間では、気を配る場所が違います。設計中にはデータと作業環境を、加工中には機器の周囲や材料の扱いを考えます。同じ「デジタル技工」でも、部屋の使い方まで同じになるわけではないと感じました。
今回は設備を大きく入れ替えるという話ではなく、いま行っている工程と、そこに置いているものをあらためて見比べる機会になりました。必要な設備を考えるときには、機器の名前だけでなく、どの作業をどこで行っているかまで見たほうが、自分の技工所の状態を整理しやすそうです。
CAD/CAMは、加工後に残るものまで考える
資料1の31ページなどでは、ジルコニアの切削粉じんやPMMAの切削くずを背景に、集塵設備、防じん対策、切削残渣の保管・管理を整理する必要性が挙げられています。
CAD/CAMという言葉には、画面の中で設計して、機械が加工してくれる印象があります。それでも、加工が終わったあとには粉じんや残渣が残ります。機械を置けば終わりではなく、取り出す、掃除する、残ったものを管理するところまでが、毎日の仕事です。
私も今回、製作するクラウンの形だけでなく、その周囲の作業に目を向け直しました。集塵や防じん、残渣の扱いは、加工の精度とは別の話に見えて、同じ作業環境の中につながっています。ここでは、新たな対策をすべて導入できたという報告ではなく、普段の工程を見直した記録として書いています。
3Dプリンタは、洗浄とIPAの行き先も含めて
資料1の32〜34、48ページでは、VOC(揮発性有機化合物)、IPA蒸気、未硬化レジン、皮膚曝露、臭気、火災リスクや廃液管理に触れ、換気・局所排気・作業区域の区画化を検討課題としています。これらが今回すべて新たに義務化されたという意味ではありません。
Dentoryでも3Dプリンタを使用しています。造形が終わっても、洗浄や後処理が残ります。今回は、完成した模型だけを見て終わらず、洗浄に使うものと、使い終わったものの管理をあらためて確認しました。
洗浄に使用するIPAについては、使用済みIPAを購入先が回収してくれる仕組みを利用しています。使用後の行き先が決まっていることは、日々の運用を考えるうえで大切だと感じています。
もちろん、回収の仕組みがあるだけで、作業中や回収までの管理がすべて済むわけではありません。使うとき、置いておくとき、引き渡すときまでを一続きの作業として考える。今回の資料は、その視点を持ち直すきっかけになりました。
技工室を測ったら、ホームページも確認することに
最初は技工室を測って、ひと安心したら終わるつもりでした。ところが資料を読み進めると、電子データ管理の話も出てきます。これは、Dentoryのホームページにも関係することでした。
Dentoryでは、ホームページからデジタル歯科技工指示書を作成したり、スキャンデータや写真などを送信したりできます。便利な入口を用意する一方で、届いた情報がどこに保存され、誰が確認できるのかを、こちら側でも把握しておく必要があります。
資料1の39〜41ページでは、患者情報、クラウド共有とアクセス権限、不正アクセス、データ消失、改ざん、ランサムウェアなどが扱われています。46ページの中長期の案には、認証、ログ管理、バックアップ、インシデント対応等の最低要件の整理が挙げられています。
ここにも今後の検討事項が含まれます。ただし、電子データの安全管理すべてが将来の話というわけではありません。資料は、現行法令やリモートワークに関する通知による対応事項も整理しています。新しい最低要件の案と、すでに求められている対応を分けて読むことが大切だと感じました。
通知メールは、届いたことを知らせる役割に
今回、データ送信や指示書発行の流れを確認し、2026年10月6日に一部の改善を本番環境へ反映しました。そのひとつが、Dentory側に届く通知メールです。
患者氏名、歯科医師名、技工指示内容、メモなどの詳細を、通知メール本文に含めない方式へ変更しました。メールでは受付IDや受付日時、医院名など、到着を確認するための情報を知らせ、詳細は管理者認証後の画面で確認する形にしています。
変更したつもりで終わらないように、本番環境から明確にテストと分かる架空の医院・患者情報で送信しました。指示書と一般データ送信の両方について、Dentory向けと医院向けのメールを実際に受信し、本文を確認しています。実患者の情報をテストに使ってはいません。
医院向けの受付メールも、受付IDや日時などの確認情報を中心とし、患者情報やDentory専用の管理リンクを含めていません。受付メールはシステムへの到達を知らせるもので、内容確認、製作可否や納期の確定を伝えるものではありません。
データの取得にも、管理者認証を
一般データについては、受信用リンクだけではデータを閲覧・取得できず、Dentory側の管理者認証を必要とする方式に変更しました。
本番環境では架空データを使用し、認証前には取得できず、管理者認証後には正常にデータを確認できることまで確認しています。
今回できたことと、これから確認すること
今回の見直しで、技工室の面積を実際に確認し、CAD/CAMや3Dプリンタの作業環境を考え直しました。電子データについては、通知メールの情報を絞り、一般データの取得に管理者認証を加え、本番環境で架空データによる動作確認を行いました。
一方で、情報管理については今回の対応で完了したとは考えていません。バックアップ・復元、操作記録、受信データの安全管理などについても、今後の制度や運用状況を確認しながら継続して見直していく予定です。
今回は「安全管理が完了した」という報告ではなく、厚生労働省の資料をきっかけに現状を確認し、現在できる改善を行った記録です。
メジャーを持ってきたことが、よいきっかけになりました
資料を読む前は、技工室の面積を測り、その流れでホームページの通知メールまで見直すことになるとは思っていませんでした。最初の「うち、本当に10㎡ある?」という小さな不安が、設備とデータ管理を一緒に考えるきっかけになりました。
日々の製作では、どうしても補綴物そのものに目が向きます。今回、部屋の広さ、加工後に残るもの、洗浄で使うIPA、受け取ったデータまで見渡してみて、その周囲も含めて技工所の仕事なのだとあらためて感じました。
今後の検討会資料や正式な制度の動きも確認しながら、Dentoryの実際の業務に照らして、一つずつ見直していきたいと思います。
参考資料|厚生労働省の外部サイト
本記事の制度に関する記述は、以下の一次資料と照合しました。ページ番号は資料1に印刷された番号です。個別の設備の適否を判断するための法令解説ではなく、Dentoryで行った確認と改善の記録としてお読みください。
厚生労働省|第9回 歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会(外部リンク)
外部サイト・2026年10月2日
厚生労働省|資料1「歯科技工所の構造設備基準について」(外部リンク)
外部PDF・現行基準:7ページ/粉じん・3Dプリンタ:31〜34ページ/電子データ:39〜41・46ページ/今後の課題:48〜51ページ